縁に話しかけられ、目の前の絵から視線を外す。
その瞬間、風が揺れて、何かに誘われるかのように振り向けば、一人の女性が目に留まる。
絃静
「……」
何で視線を奪われたのかわからない。
雰囲気なのか、笑顔なのか、それとも――。
(……彼女の隣を歩いているのは恋人だろうか)
横顔を目で追っていると……。
(あ……)
彼女と視線が重なる。
この手では生み出せそうにもない美しい色彩を湛えた瞳は、不思議そうにこちらを見つめていた。
他の誰にでもそうしてきたように、気のあるふりして笑えば、君は興味を持ってくれるのかな。
だけど、その前に彼女の視線は隣の男に向けられてしまった。