絃静
「ほら、いいから寝な」
杏樹
「でも……」
戸惑いはあるものの、ぐっと肩を寄せられる力に身を任せることにした。
絃静
「お兄ちゃんのひざまくらはどうだ?」
杏樹
「うーん……硬い」
絃静
「ははっ、感想がひどいな。眠りこけてよだれ垂らすなよ~」
杏樹
「気をつける」
絃静
「よしよし」
くるくると目の前で様々なシーンが繰り広げられるのを無理やり終わらせるように目を閉じると、少し硬いまくらから伝わるあたたかさにかつての記憶がよみがえる。
(昔、お父さんにひざまくらをされて眠ったことがあったような……)