楽しそうな声に視線を向けると、そこには数人の男の人たちが壁に絵を描いていた。
構内でストリートアートのイベント主催者が作ったであろう『参加者募集』という張り紙を何度となく見かけた事を思い出す。
(今日だったんだ)
ああいうイベントに参加する人もいるんだなと、ぼんやり見ていると彼らの中心にいる人物が振り返り――
(あ……)
目が合う。
その瞳は赤く燃えているようで、その反面、冷めるような静けさを持っているように感じた。
奇麗だな、と思った。熱さと冷たさが混じり合うその瞳も、途切れてしまった楽しそうな声も、彼の前に佇む蝶も、とても奇麗だと。
そう思った。